#:g1: NILの商用版が存在していた!

Posted 2018-10-01 17:53:43 GMT

先日 @hatsugai さんからLisp関係の記事があるということで1986年のInformation(インフォメーションサイエンス社)というコンピューター月刊誌をお借りしました。
このInformationですが、1986年は第二次AIブームのまっさなかということで、面白い記事が多かったです。

AIワークステーション花盛りという感じで興味深い広告も多いのですが、その中でも目にとまったのが、裏表紙のMicroVAX IIの広告です。

MicroVAX IIもAI対応してますよ!という広告なのですが、用意されているAI言語として、当時かなりシェアが高かったFranz LispとNILの名があります。
……NIL! NILが商用化されていたとは!
広告の文言をそのまま引用すると、

■NIL
MIT AI Lab. で開発されたCommon LISP
米国Impediment(製)

とのことで、Impediment社があつかっているということですが、LispはSpeech Impedimentみたいなので、そんな洒落を社名にするならLisp関係の会社でしょうか。
早速ネットを検索してみたりしていたのですが、Impediment inc という検索ワードで、それらしき情報が出てきました。

この記事によると、マシンスペック 5-16メガRAMのVAXで稼動し、Fravorsによるウィンドウシステム、Emacs系エディタが開発環境として用意されていますようです。

Fravorsによるウィンドウシステムは、ウィンドウシステムまるごとなのかVAXのものにのっかったものなのか知りたいところです(当時だと丸ごと作っていそう)が、Lispマシンのものを移植したりしていそうです。

Emacs系エディタについては、NILのマニュアルではSteveというものが標準エディタとして解説されていますので、多分Steveが動いたのではないでしょうか。 ちなみに、Steveの他にNileというものがあったとWikipediaに記載がありますが、実在したのかは未詳。

Impediment社は90年代からウェブサイトを所有しているようで、現在もドメインは活きているようですが、ウェブサイト自体は落ちているようです。 会社の住所は1985年の記事のものと同じようなので同一の会社かと思われます。

whoisで所有者情報を確認してみたところ、Alexander Sunguroff氏が管理者の様子。過去のAI関係の記事に社名と一緒に紹介されているようなので経営者のようにみえます。

Sunguroff氏は、1970年代初頭にはProject MACに関わっていたようで、主に初期のMultics MACLISPの開発にDavid Moon、….氏と共に携わっていたようです。

また、MACLISPマニュアルの定番である1974年版はDavid Moon氏とSunguroff誌が一緒にまとめたようです。

NILは、MITでのLisp Machineプロジェクトと同じく、MACLISPの後継ですが、後にCommon Lispの礎となり、自らもCommon Lispのスーパーセットとなりました。 Common Lispがレキシカルスコープを採用したのは直接的にはNILの影響だといわれています(当事者達曰く)

この辺りの経緯を鑑みるに、筋金入りのLisperであるSunguroff氏が1984年あたりに宙ぶらりんになっていたNILを商用化するために会社を興してもおかしくはないなと推理しているのですが、真相やいかに。

当時のLisp環境の最高峰といえば、Lispマシンでしたが、汎用機上のライバル達もLispマシンに追い付け追い越せで、Lisp OS、ウィンドウシステム完備のGUI、Lisp向けエディタ(Emacs etc)を一式揃えて勝負していましたので、NILもOSこそLisp OSではないものの、そんな感じだったのではないかと思います。

NILはMIT内で利用されていたのみと思っていたのですが、製品として世に流通していたとすれば、そのうち誰かが発掘してbitsaversにでも置いてくれるかもしれません。
いつかNILを起動してみたい……。


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